しみのおはなし その②

【日光色素斑(老人性色素斑)の治療について】

当院では主にQスイッチルビーレーザーを用いて治療しております。
一般的にレーザーとは、波長・位相のそろった特殊な光です。Light Amplication by Stimulated Emission of Radiationの頭文字を略してLaserと呼ばれています。現在では医療・通信など様々な分野で利用されているのは皆様も周知のことと思います。
皮膚の色素性疾患に対しては、ルビーレーザーが1987年に厚生省の医療承認がおり臨床使用が可能となりました。
Qスイッチルビーレーザーとは694nmにピークを持つ可視光線で、莫大なエネルギーを20ナノ秒(ナノ秒:10億分の1秒)という超短時間でシミに照射することで、ターゲットとなるメラニンを破壊してシミを治療していきます。
私とQスイッチルビーレーザーとのお付き合いは20年以上になります。もちろんレーザー機器は進化しておりますので、すでに3台(代?)目のレーザーです。このレーザーの出現により、しみやあざの切らない治療が可能となり、とくに太田母斑(先天性の顔に認められる青色や褐色のアザ)の治療では従来の治療ではできなかった夢のような結果が得られることとなりました。このレーザーが皮膚色素性疾患の歴史を大きく変えたと言っても過言ではないと思っております。そして20年以上たった今も愛用しているレーザーです。

治療の流れ
治療部位を軽く冷やしながらレーザーを照射します。病変が広範囲の場合や痛みに弱い方には麻酔のクリームを使用することも可能です。照射時はゴムではじかれたような痛みが生じます。さらに照射後1時間程度はヒリヒリとやけどをした後のような痛みがあります。
治療部位は茶色のテープで保護させていただきます。その後、顔ならば1週間程度はそのテープを貼ったまま過ごしていただきます(テープの上から軽いメイクは可能です)。
およそ1週間後に薄い痂皮をはがすと、新しいピンク色の皮膚がみてとれます。ここからは通常のメイクも大丈夫です。
その後の経過は、患者様の肌質によってかなりの差があります。
どんどん周辺の皮膚になじんでいく場合と、再度赤みが増したり、まるでシミが再発したように茶色く色がついてくる場合があります。東洋人では後者の割合が比較的高いので要注意です。この現象を炎症後紅斑や炎症後色素沈着と呼んでいます。メカニズムは日焼けした後の肌と似ています。人間の肌は炎症をきたすと、その後一時的に赤くなったり茶色くなったりしやすいのです。とくに黄色人種ではその色調の違いが分かりやすく、しかも個人差も大きいです。
色素沈着が生じた場合は日焼けや摩擦に気をつけながら、ひたすら待っていただきます。時には1年以上待つ場合もありますが、多くの場合3~6か月程度で次第に薄れてきます。合わせて美白剤を併用する場合もありますが、何もしなくても日焼けや摩擦に注意して過ごしていただければ自然に薄れてきます。


 

2020年01月01日